ストーリーだけを追えば、ベタな内容だし、
物語の展開的にも、終盤の説得力が欠けるとか、
親子の関係の変化に深みが感じられないとか、
妖怪たちに魅力がないとか、
最後がきれいにまとまり過ぎだとか、
いろいろ言われていて、
もっともだとうなずく点も多いのだが、
でも、楽しく見ることができたのであった。
何と言っても作画が綺麗なのだ。
背景の美しさは言うに及ばず、
人物の動きや表情がとても魅力的なのである。
何よりまずストーリー展開を優先して見る人には、
この映画の評価は厳しくなるだろうとは思う。
大きな流れではなく、
ちょっとした振る舞い、間の開け方、表情の変化が、
とても気持ちの良い作品なのだから。
そのひなびていて、ほのぼのしていて、
でも生活や歴史や濃い人間関係がちゃんと存在している
村社会のたたずまいが実に良く出ているのである。
その雰囲気やリズムみたいなものに、
ももの声、反応、行動などが、
うまく溶け込んでいるのだ。
確かに、喧嘩したまま父が亡くなってしまったという
悲しい過去の思いを抱き続けているももではあるが、
そういう主人公だからと言って、
四六時中そのことを思い出してウジウジしているというのは
現実的ではないだろう。
この作品では、このももの中の暗さと明るさの微妙なバランスが、
現実的な形でうまく取れている気がするのだ。
その適度な距離感が、逆にリアルであり、気持ち良いのである。
そこにまた、ジブリの主人公のように前向きで積極的ではない
ももという女の子の、やわらかな魅力が
じんわりと出ていると思うのだ。
ベタな設定でも泣けるのは、
ももの描き方がとても上手いからだろうな。
それから、三人の妖怪以外の
落書きのようなウジャウジャした妖怪が良かったな。