すでに一度最後まで読んでいるので展開はわかっている。
切ったり張ったりみたいなアクションもないし
血みどろなホラーでもないし、
大立ち回りなクライマックスが控えているわけでもない。
でもこの何気なさと全体のどんよりした暗さが
なんとも言えず面白いのだ。
久しぶりに訳していて楽しいのである。
そしてつくづく、
「青い鳥」のぐちゃぐちゃした原稿が
いかにストレスフルだったかを実感したのである。
HTML指定が乱れ飛んでいない素の文章を綴るって
こんなに楽で気持ち良いことだったのか、みたいな。
平井呈一氏の翻訳も素晴らしい。
恐れ多くも敢えて言わせていただけるなら、
抜けている段落がある。
勘違いと思われる訳がある。
こなれていない日本語がある。
こうしたじっくりと進む物語では
心の動きや場面の緊張感を
訳した言葉が途切れさせないようにする必要がある。
日本語のリズムみたいなものである。
それは解釈が正しいかどうかとは、また別の問題なのだ。
そこに、ワタシが今訳す意味があるのだと思う。
楽しみながらがんばれる作品だ。
次作にこれを選んだのは正解だったな。