2014年3月16日日曜日

物語を翻訳するのは難しいのだ

技術的なことが書かれている文章とは違って
いわゆる文学的な文章の場合は翻訳するのが難しい

それはもちろん抽象的な表現とか婉曲的な言い回しとかががあって
難しいのは当然だということになるのだろうけど
そういういかにも文学的な部分以外でも
例えば持って回った言い回しをどこまでそのまま訳すかというのも
実際に作業しているとかなり難しいのである

例を出すと

 it would be unwise for us to go any other way except due South.

という文章がある
これはいきなり「would」が出てくるので
文法的には「if」を使わない仮定法なのだが
ベタ訳だと

真南を除いた他の道を行くことは、私たちにとって無分別なこととなるでしょう。
  
真南を除いた他のいかなる道を行くにしても、それは私たちにとって無分別なこととなるでしょう。

という感じだ

これはドロシーという少女が言っているので
堅苦しい表現を抑え気味にして状況から省略できる部分を抜くと

真南以外の道を行くのは、賢明/利口じゃないと思うの。

ぐらいなところだろうか

これを

真南以外の道を行くのは、良くないと思うの。

としても良いかもしれないが迷うところだ
「賢明」とか「利口」という言葉がドロシーに適当か微妙だが
「unwise」の意味も残しておきたい気がするからなのだ
でも小さい女の子ドロシーの言葉としては自然な感じがする

でも会話の流れから一番自然なのは

真南以外の道は、この際行くべきじゃないと思うの。

だったりするのからまた悩んでしまうのだ

しかしこれを

真南に行くしかないと思うわ

とまでするのはまとめ過ぎるだろう
確かに言わんとしていることはそう言うことなんだけど
回りくどさは回りくどさとして訳にも残したい

この回りくどさは表現として回りくどく訳したいとか
単語のニュアンスは出来るだけ残して訳したいという部分と
こなれていないぎこちない日本語にしたくないという部分とが
常にせめぎあっているのである
まとめ過ぎると意味は通るけど
文章としては味気なくなってしまうからなのだ

何てことを考えながら訳しているから
面白いんだけど時間がかかっちゃうんだよなぁ